いい家具とは?大川家具の産地で育った家具店社長が語る、後悔しない家具の選び方
いい家具とは? 大川家具ドットコム代表・堤太陽氏に聞く、後悔しない家具の選び方
家具を選ぶとき、何を基準にしていますか。
デザイン、価格、サイズ、木の種類。インターネットで探せばたくさんの商品が見つかる一方で、写真だけではわからないことも少なくありません。
「無垢材ならいい家具なの?」「完成品と組み立て式では何が違うの?」「買った後に困ったら、誰に相談すればいい?」。長く使うものだからこそ、確かめておきたいことがあります。
今回、株式会社ユウキノイン代表取締役の酒匂雄二氏が、福岡県大川市にある大川家具ドットコムの本社兼ショールームを訪ねた。話を聞いたのは、同社代表取締役の堤太陽氏。実際の家具を前に、素材や構造の違いから商品選びの基準、産地への思いまで、じっくり伺った。
最初に尋ねたのは、堤氏が家具の仕事を始めた理由。その言葉からは、生まれ育った街の風景を残したいという思いが伝わってきた。
通学路にあった家具工場。その風景をなくしたくなかった
――まず、大川家具ドットコムを始めた経緯を教えてください。
堤:もともとは北九州で分譲マンションの会社に勤めていました。そこを辞めて、次の仕事を探しているときに、家業の家具卸を手伝い始めたんです。最初は、別の仕事も探しながら、アルバイトのような感じでした。
ただ、手伝っていくうちに、家具産業の状況がだんだん厳しくなっていることが見えてきました。当時の大川は、量産する比較的手頃な価格の家具を得意としていたので、海外から入ってくる家具と競合する部分が大きかったんですね。
私は大川市の出身です。小学校の通学路にも、突板(※)の工場や建具屋さんがたくさんありました。

昔から身近にあったものがなくなっていくのは寂しい。
大川の家具を盛り上げたいと思ったことが、ネットショップを始めるきっかけでした。
※突板とは・・・天然木を非常に薄くスライスしたシート状の素材。集成材などの表面に貼り付け化粧板として用いる事が多い。
――インターネットを選んだのは、大川の家具を全国に届けるためだったんですね。
堤:そうですね。大川に戻ってきた2008年頃は、家具に限らず、いろいろな業界で「ネットショップをやろう」という動きがありました。大川家具という名前を全国に広めるには、インターネットが最適な媒体だと思ったんです。
ちょうど「大川インテリア塾」という取り組みで、ネットショップを始めることが題材になっていました。私はネットの世界も、ショップをつくることも素人だったので、そこで随分助けてもらいました。今につながるメーカーさんとの出会いもありましたね。
もともとの卸の仕事があったので、ネットショップは気長に育てていけた面もあります。
商品説明を詳しくすることは、最初から心がけていました。
そのために家具のことを覚え、何をどう説明するか考える。そこは頑張ったところです。
大川家具を選ぶなら、どこでつくられた家具なのかを聞いてみる
――そもそも「大川家具」とは、どんな家具なのでしょうか。
堤:私たちは、大川市内とその近辺でつくられた家具を大川家具と呼んでいます。
大川が得意なのは、キャビネットやテレビ台などの「箱物家具」です。

家具の産地には、それぞれ得意分野があります。
例えば、こたつは徳島から取り寄せることもあります。
大川家具ドットコムでも、大川の家具を中心にしながら、ほかの産地の家具も扱っています。ただし、どこの産地でもいいということではありません。私たちが大切にしているのは「国産家具」であること。大川以外の産地の商品を扱う場合も、日本国内でつくられた家具という軸はずらしません。
――ネット上で「大川家具」と書かれていたら、それだけで大川でつくられた家具だと思ってしまいそうです。
堤:実際には、その名前で販売されていても、よく見ると中国製やベトナム製と書かれていることがあります。大川でつくられたものを探しているなら、一番いいのはお店に聞くことですね。
「大川家具」という言葉だけで判断せず、「この家具はどこでつくられていますか」と確かめる。ただ、原産地をわかりにくく表示し、消費者に大川産だと思わせようとする販売者がいる可能性もあります。質問しても製造国や製造地を明確に答えてくれない場合は、表示だけをうのみにせず、購入前に確認したいところです。
家具そのものを知ることはもちろん、質問にどう答えてくれるお店なのかを知る機会にもなりそうです。
家具のつくりは、板の端に表れる
――お客様が家具を見たときに、仕事の丁寧さを確かめられる場所はありますか。
堤:違いが表れやすいのは、「木口面(こぐちめん)」と呼ばれる板の端の部分です。
実物を見てもらうとわかりやすいですね。

タンスのような箱物家具を、すべて無垢材でつくると、かなり重くなります。
そのため、中を空洞にした「フラッシュ構造」がよく使われます。そうした板を組み合わせると、端の部分に断面が出てくるので、そこをどう仕上げるかで違いが出るんです。
紙のテープで仕上げるものもあれば、無垢材を使って仕上げるものもあります。
見栄えにも違いが出ますし、こうした細部を見ると、つくり方がわかります。
――表面の色や木目だけでは、見えない部分ですね。
堤:中の構造にも違いがあります。例えば、天板の内部にハニカムコアという蜂の巣状の材料を入れるものもあって、そうした違いが強度や価格にも関わってきます。
ショールームで断面を見せてもらうと、家具は単に「木の板を組み合わせたもの」ではないことがわかります。重さや強さ、仕上がりを考えながら、見えないところにも工夫が施されていました。
ネットで選ぶときも、木口の仕上げや内部の構造まで説明されているかは、一つの手がかりになります。写真でわからなければ、問い合わせてみる。見た目の好みから一歩進んで、家具のつくりを知るための質問です。
箱物家具で完成品をすすめるのは、接合の仕方に理由がある
――組み立て式と完成品では、どんな違いがあるのでしょうか。
堤:箱物家具に関しては、私は組み立て済みのものをおすすめしています。工場では、ダボや接着剤を使って組み立てた後、機械で強くプレスして、接合部分を密着させるんです。
手で組み立てている場面はよく見かけると思いますが、その後に機械で押さえる工程があります。そうしてつくられたものは、よじれにくいんですね。
ネジで留める家具は、揺れが続くことで、だんだんネジが緩んでくることがあります。接合面を接着して組むものとは、構造が違います。
完成した姿が似ていても、どう接合されているかまでは、写真だけではわかりません。堤氏の話から見えてきたのは、「完成品だから」という言葉だけではなく、その丈夫さを支える工程まで知って選ぶことの大切さでした。
木の種類は、特徴を知ったうえで好みを大切に
――家具に使われる木にはいろいろな種類がありますが、何を基準に選べばいいですか。
堤:このショールームにも、ウォールナット、オーク、メープル、ヒノキ、ブラックチェリーなどがあります。色がかなり違うので、基本的には、お部屋に合う色や、ご自身が好きな色で選んでいただいていいと思っています。
もちろん、それぞれ特徴はあります。杉のように柔らかく、傷がつきやすいものもありますし、オークやハードメープルは硬い木です。ただ、ここにあるテーブルに使っている木の中で選ぶなら、好みを大切にしてもらっていいのかなと思います。
――ブラックチェリーは、同じ家具でも外側と内側で色が違って見えますね。
堤:ブラックチェリーは色の変化が大きい木です。最初はもっと明るい色なんですが、使っていくうちに色が変わってきます。そこを楽しむのも一つですね。
木の種類を覚えて、正解を一つに絞らなければいけないわけではありません。
傷のつきやすさや色の変化など、使ってからの特徴も聞いたうえで、「この色が好き」「この部屋に置きたい」と感じるものを選ぶ。その順番なら、家具選びをもっと楽しめそうです。
また、新しい素材として、クヌギを家具に活用する取り組みの話も出ました。

堤氏によると、シイタケ栽培の原木としては扱いにくいほど太くなった木を、家具に使えないかと材木屋さんが提案しているそうです。素材の名前だけでなく、その木が家具になるまでの背景を聞くのも、選ぶ楽しみの一つかもしれません。
この話をしている時にも、クヌギのちゃぶ台に電話注文が入っていました!
商品を選ぶ基準は、実物と、届いた後のお客様の声
――大川家具ドットコムでは、取り扱う家具やメーカーをどう選んでいますか。
堤:過去に仕入れた商品を見ていると、「ここのメーカーさんはつくりが少し粗いな」とか、「トラブルが起こりやすいな」といった傾向はあります。そういうところはなるべく扱わず、お客様に届いたときに評判がいい家具をつくるメーカーさんを選ぶようにしています。
新しいメーカーさんの場合も、実際にものを見ます。
大川では年に4回展示会があるので、そういう機会も使いますね。
――そうですね。社長だけではなく、スタッフも実物を確かめていますね。
堤:はい。私だけでなく、ほかのスタッフも商品ページをつくっていますので。
商品を仕入れる前に見ることと、販売した後の声を受け止めること。その両方が、次の商品選びにつながっています。画面に並ぶ家具の向こうには、実物に触れ、説明を考え、お客様の反応を見ている人がいるのです。
引き出しは、軽く開けばいいとは限らない
――オリジナルの「なごみチェスト」は、どんな暮らしを思い浮かべてつくったのでしょうか。
堤:小さな子どもがいる家庭のことを考えて、うちで設計したチェストです。主に、1歳未満のお子さんがいる場面を想定しています。

つかまり立ちをする頃の子どもは、転ぶこともありますよね。取っ手が金具だと、ぶつかったときに心配なことがあります。そこで、比較的柔らかいヒノキを使い、角も丸く、滑らかに仕上げています。
――引き出しにレールがないのも、理由があるのでしょうか。
堤:小さな子どもは、引き出しを開けたがります。開けた引き出しに手をかけて、つかまり立ちをしようとすることもありますよね。
レールがあると軽く動きますが、このチェストには少し抵抗があります。レール付きのものに比べて、急に勢いよく動きにくいようにしています。
国産のヒノキを使うことや、低ホルムアルデヒドなど、素材の面も考えて企画しました。今でもよく買っていただいている商品です。
――購入された方の反応はいかがですか。
堤:「思ったよりいいものが届いた」という声や、香りを喜んでいただくことがあります。うちのスタッフにも使っている人がいますよ。
大人にとっては「軽く、滑らかに開く」ことが使いやすさでも、小さな子どもがいる暮らしでは、違う視点が必要になる。なごみチェストには、そうした日常の動きに目を向けた設計がありました。
遊びの続きを、そのまましまえる秘密基地
――もう一つ、名前が気になるのが「秘密基地シリーズ」です。

堤:きっかけは、スタッフから「子どもがリビングに広げたプラレールを片づけてくれなくて困る」と聞いたことでした。
子どもにとっては、せっかくつくったものを壊したくないんですよね。
それなら、この中でつくって、そのままにしておけるようにしたらどうだろうと考えました。
そう話して堤氏が天板を動かすと、テーブルの中に収納スペースが現れました。ここで遊びを広げておけば、食事の時間には天板を戻して、テーブルとして使えます。片づける側の都合だけでなく、「また続きで遊びたい」という子どもの気持ちも考えた家具です。
天板の裏側は黒板になっていて、お絵描きにも使えます。取材中には、プラレールだけでなく、ミニカーや、途中まで組んだジグソーパズルにもよさそうだという話になりました。
――反響はどうでしたか。
堤:10年ほど前に東京の展示会に出したときは、かなり反響がよかったです。
ただ、大きさには課題がありました。小さいバージョンもつくったんですが、それもなかなか思うようにはいかなくて。コンセプト自体はよかったんですけどね。
暮らしの困りごとから生まれたアイデアを、実際に使いやすい商品にする。その難しさにも、率直に向かい合うのが大川家具ドットコムの強みです。
あと5センチをかなえるために、職人とつながる
――サイズオーダーでは、どのような相談が多いですか。
堤:「この場所に入れたい」という、具体的なイメージを持った方が多いです。例えば、「幅100センチのものを95センチにできませんか」といった相談ですね。
サイズ変更ができる家具と、できない家具はあります。ただ、既存の商品では変更できなくても、別注をお願いできる職人さんがいるので、似た形で希望のサイズにつくるという方法もあります。
――商品ページにサイズ変更の案内がなくても、まずは相談してみていいんですね。
堤:はい。ただ、別注になると金額はかなり上がることがあります。
その代わり、量産の家具とは違って、自分の希望に合わせてつくれます。
例えば、普段はコンパクトに使い、友人が来たときには広げられるような、伸縮式のバーカウンターの相談もありました。

置く場所に収まることだけでなく、誰と、どのように使いたいか。
相談を重ねることで、既製品のサイズから選ぶだけでは見つからなかった方法に出会えることもあります。価格との兼ね合いも含めて話せる相手がいるのは、産地の職人とつながる店ならではの強みです。
100のものを100で伝えるために、動画と板見本を使う
――実物を見ずに買う不安を、どのように減らしていますか。
堤:動画をよく使っています。動きや質感は、写真よりも情報量が多いと思うので、なるべく実際の姿が伝わる見せ方をしたいんです。
写真は、実物よりよく見せることもできます。でも、
買ってからがっかりされたくない。
うちは「100のものを100に」したいと思っています。そのためには、動画で見せるのがいいのかなと。
あとは、板見本をお送りできるものもあります。専用のフォームがありますし、普通に問い合わせていただいても、送れるかどうかをご案内できます。
きれいな写真で興味を持ってもらうことと、届いたときに納得してもらうこと。堤氏が大切にしているのは、後者まで含めた伝え方でした。引き出しの動きは動画で、素材の印象は板見本で。画面越しでは足りない情報を、別の方法で補っています。
30年前の家具の相談にも、できることを探す
――購入後に困ったことがあった場合は、どのように対応していますか。
堤:基本はメールでやり取りしていますが、それで解決しない場合は、実際に伺うこともあります。
家具は、アフターが大事だと思っています。
使っているうちに扉の閉まりが悪くなったり、調整が必要になったりすることがありますから。
そういうとき、家具のことがわからないお店だと、質問に答えられないこともあります。
そもそも、どのお店で買ったかわからなくなってしまう方もいて、うちにも相談のお電話がかかってくるんです。
――大川家具ドットコムで買った家具ではない場合もあるのですか。
堤:ありますね。うちでも扱っている商品だったり、メーカーがわかったりすれば、対応できることもあります。
この前は、取っ手について「30年前に大川で買った」と相談されたことがありました。うちで買ったと思われていたようですが、30年前にはうちはまだこの事業を始めていないんです(笑)。
大川に金物屋さんがあるので、「そこに相談してみたらどうですか」とご案内したら、後で「相談に乗ってくれるそうです」とお返事がありました。
販売から長い時間がたっても、家具は誰かの暮らしの中にあります。
店を覚えていなくても、「大川で買った」という記憶を頼りに相談が届く。
その声に対して、できることを探す姿勢にも、堤氏の産地への思いが表れているように感じました。
お客様の声を家具にして、大川から世界へ
――これから、どんなことに取り組んでいきたいですか。
堤:大川を世界に知られる家具・インテリアのまちにしたいという思いは、変わっていません。
最近は越境ECにも力を入れていて、海外のお客様にショップを通じて家具を届けています。国でいうと、アメリカが一番多いですね。
海外への販売は、日本国内以上に難しい面があります。だからこそ、より信頼してもらえるようにしていく必要があると思っています。
それから、オリジナル家具をもっと増やしたいです。私たちはメーカーさんより、お客様の声を直接聞く機会が多い。その声に合った家具のラインナップを増やしていきたいですね。
――最後に、これから家具を買う方へ、選ぶときに大切にしてほしいことを教えてください。
堤:家具は10年、20年、30年と使うものだと思っています。それを一般の方が見極めるのは、なかなか難しいですよね。だから、店員さんによく聞くことが大事なのかなと思います。
家具選びを助けるAIのツールも用意していますが、それでもわからないことは、メールや電話で相談していただければと思います。
いい家具選びは、買った後の相談先まで選ぶこと
今回の取材で、家具の見方が少し変わりました。
板の端の仕上げや、接合の方法。木の色が変わる楽しさ。小さな子どもがいる家では、引き出しが軽く動くことだけが使いやすさではないという視点。どれも、写真と価格を見比べるだけでは気づきにくいことです。
そして、堤氏が最後に挙げたのは、長く使う間のアフターフォローでした。家具を選ぶことは、そのとき気に入ったものを買うだけでなく、困ったときに相談できる相手を選ぶことでもあります。
どこでつくられたのか。どんな構造なのか。自分の暮らしに合うのか。わからないことを一つずつ聞きながら、納得して選ぶ。そのやり取りから、長く付き合える家具との出会いが始まるのかもしれません。
家具の詳細や店舗の取り組みについては、国産家具専門店・大川家具ドットコム公式サイトでも紹介されている。

取材者・インタビュー対象者
インタビュアー:酒匂雄二(さこう ゆうじ)氏

株式会社ユウキノイン 代表取締役。1977年大阪府吹田市生まれ。ECの運営やSEO、コンテンツマーケティングに携わり、公式プロフィールによると支援したECサイトは延べ300サイト以上。公益財団法人大阪産業局・大阪産業創造館のクラウドファンディングサポートプログラム総合プロデューサーも務める。
インタビュー対象:堤太陽氏
株式会社大川家具ドットコム 代表取締役。福岡県大川市出身。家業の家具卸を手伝った経験から家具のネットショップを立ち上げ、家具産地とお客様をつなぐ販売・商品企画・サイズオーダー・海外販売に取り組む。
関連ページ
大川家具ドットコムのサイズオーダー対応家具 / 大川家具ドットコム公式オンラインショップ
取材場所:株式会社大川家具ドットコム 本社ショールーム(福岡県大川市)
※本記事は提供されたインタビュー原稿をもとに、発言の趣旨を変えない範囲で構成・編集しています。取材日と執筆者は未確認です。写真と実物の対応、画像の公開URLは公開前に確認してください。
あわせてご覧いただきたい商品